[エッセイ/随想]恋愛の果ての成果物
(2020/08/31 10:32:57)


考えてみれば何ひとつ合っていない。
右といえば左。左といえば右。
大きなことから小さなことまですべてが真逆。

つまり、阿吽の呼吸の対極に立つ。
これが、恋愛関係を長続きさせるための秘訣なのだ、と痛感した。

例えば、仕事から帰って来て、ドカッと腰を降ろして安堵の溜息をひとつ。フィ〜、ちかりたなぁ〜。こんなとき、テーブルにお茶なりビールなりがスッと出されたとする。

普通なら「お、気が利くねぃ。ありがとう」てなところだろうが、それでは駄目なのだ。

気が利くということは、良くも悪くも結論に至るまでのプロセスが圧倒的に短い。中には早合点、早とちりも含まれているかも知れない。そういった誤解や曲解を解くためにもコミュニケーションや手続きなりが必要なはずなのだが、それらがすべてショートカットされてしまう。

ということは、相手と関わる時間や労力を割く必要が自然となくなってゆく。
詰まるところ、必然、遂には何もなくなってしまうのだ。

お分かり頂けるだろうか?
恋愛とは、極論、無駄を楽しむものだ。

 あーしたい、こーしたい。でも、どーしよう。うまく伝わるかしら。
 こーしようかしら… どーすればいいのかしら…
 ん、あーすればいいわね。やっぱり、こーのほうがいいかも、でも…

非常に鬱陶しい。そして、途轍もなく魂を消費する。
だが、阿吽の呼吸だと、これらの雑事がすべてショートカットされる。

 こーしたい→そーする。以上!

殊更、恋愛に関しては、仕事が出来てはいけないのである。
この超逆説はうまく伝わるだろうか?


一般的に、仕事が出来る人はモテる、といわれているが、これは「仕事が出来る」という定義の本質に気付いていないだけなのだ。

本当の意味で仕事が出来る人というのは仕事をしない。
ハト豆的な表情を浮かべてしまう人のために弁明すると、そうすれば瞬く間に片付いてしまうことを知っているから、という意味合いだ。

早く仕事が片付くのなら、そのほうがいいじゃない。次のことに着手出来るし、などと考えられがちだが、スピードが速ければ速いほど、ついてゆける人は限られてくる。その人が何をやっているのか分からなくなるからだ。すると、必然、孤立してしまう。

組織規模の大小問わず、周囲の協力なくして会社運営はうまく立ちゆかない。孤立してしまうと、余りうまくないのだ。

だから、大多数の周囲との歩調を合わせる。協調性という魔物をうまくコントロールする。一般的な括りでは、これが出来る人を、仕事が出来る、と呼んでいるだけなのだ。
平たく、すべきことをそのタイミングでする人間、と言い換えられる。

人は自身の理解の範疇を超えるものを許容するだけの耐性を持ち合わせていない。
理解できないものは認められないのだ。

そして、大多数がその他大勢の部類に属している。奇抜さや異才の類いというものが認められるのは、ほんのひとひらの上澄みでしかない。

そこそこの特異な感性なり鋭利な発想なりというものは、より多くの無理解者に阻まれ、遂には陽の目を見ずに埋没するケースが大半なのだ。

閑話休題。

恋愛において長続きさせるための秘訣は、阿吽の呼吸を排することだ。

発声を伴わずに分かり合えるような間柄になってしまうと、その人と一緒にいる、という実感が失われ、遂には一緒に居る意味を見出だせなくなる。
極論、その人でなくても構わなくなるのだ。意識は他方や次へ移る。

これらが何を云わんとしているのかは芸能人の例を挙げるまでもなく滲みるだろう。
彼らの恋愛なりは電撃的に始まり、急転直下で終わるケースが少なくない。そして、矢継ぎ早に浮いた話を連発させたりもする。

嘘でも芸能人というのは、我々一般人よりも秀でた某かを持ち合わせているはずだ。
でなければ、大衆を惹き付けるだけの求心力がある訳がない。

そんな彼ら同士が意気投合するのに、我々と同等レベルで行われているとは考えにくく、時間にして1秒、否、刹那で行われていたとしても何の不思議もない。

極論を云えば、出会った瞬間に、すべてのコンセンサスを完了させるのだ。
つまりは、ひと目惚れの真の姿。イメージの具現化。自身の好都合に練られた思い込みを確信に押し上げてしまうスピード感。──凡人の理解を必要としないのだ。

そんな彼らが、恋人同士が営むであろう相応のフィジカルな手続きを、いちゃこら乳繰り合ったとしても、或いは、未来永劫の永遠を誓い合ったとしても、ほんの微細な亀裂が生じたが最期、破局に至るのに特別な理由を必要としないのだ。

うまく伝わるだろうか?
要するに、自由奔放ということだ。

僕は、自身の経験則からそのことを知った。
10年付き合った女を除き、それぞれ1年経たずに破局している。そのプロセスなり雰囲気なりは、この vin.spell から拾えるだろう。

落雷に打たれ、有頂天に登り詰めたのち、奈落の底へ。
暇な御仁は是非ご堪能あれ。
他人の不幸は密の味。存分に味わうべきだ。


何ひとつ合っていない者同士の成果物──愛息が僕の傍らで YouTube に釘付けだ。

今、その横顔を眺めている。
理屈抜きで可愛い。

*2016.04.11・草稿

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