「北風と太陽」で云うところの「太陽」の効力。その浸透力は、多分、生きているうちには味わえないのだろう。
マクロ的な意味で。
百年程度で世代交代してしまう持久力では、その恵みを享受する前に北風に吹き飛ばされる。
故に、真の太陽の意義は生きているうちには浸透しない。
例えば、表層で蠢く雑事に変化が表れたとしても所詮は表層。薄皮いち枚の変化では根底を揺るがすには至らない。上着を脱がせる程度では根底は何ひとつ覆せないのだ。
真理とは情け容赦なく冷徹。情けや容赦などと云う情緒的要素は人間にしか感じることはできない。万物を司る真理に情緒的要素は絶無なのだ。
故に、北風を吹き散らしながら太陽を渇望する。邪魔な思考を吹き飛ばすかのように自らの内面から北風を放出する。
「抗う」とは、そう云うこと。
これらのことから導き、北風を能動。太陽を受動と捉えると、北風がポジティブで太陽がネガティブな要素として感じられる。
角度を変えるだけで先人の説諭なりが逆転する。
陰と陽などのあらゆる「対」を包括する定義──それが「真理」だ。つまり、どちらの要素もひとつに内包されている、と云うことだ。
どちらかに傾いでいることは真理とは程遠い。それは飽くまで状態・状況。真理に到達する以前の過程である。真理とは揺らいでいる状態では存在し得ない現象なのだ。
真理と云うものが情け容赦なく冷徹であることが透けてくる。何故なら、真理とは混沌だからだ。
混沌が司る真理の渦中において、僅かな確信を頼りに盲目的に邁進する。北風に吹かれようが太陽に照らされようが──何にも動じない。
揺らぐ自身の焦燥を、
定まらぬ真理を薮睨み、
至高の愉悦にトランスレート。
我が魂の命ずるままに──。
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