[エッセイ/随想]記憶 - メタルミルフィーユ
(2011/06/04 23:59:38)


幅約1センチ、長さ約3センチ程度の矩形。柔軟性が高く、指先で難なくしなる。

あの金属片は何だったのだろう。名前が出てこない。

遡ること小学生時分、理科の実験で使った記憶だけがぼんやりとある。


多分、人間の記憶システムなどと云うものは驚くほど頼りなく、限りなく脆弱で健忘症云々を度外視したとしても非常に曖昧なものだ。

その曖昧な記憶チップに刻まれた情報なりは、緊急度や重要度の高低差や濃度・密度に関係なく、時系列の経過と共に稀薄に薄らいでゆく。

或いは、想起するに足る確固たる動機や自発性・必然性がなければ、悉く記憶の狭間へと呑み込まれてゆく。

つまり、経年劣化と云うことだ。



冒頭に登場させた金属片であるが、僕はこの金属片の正体を明かすことなどに執着はない。ただ、そう云ったものが存在する、と云う認識があれば良いだけだ。

そこでイメージして欲しい。冒頭に挙げた金属片。

それは金属ではあるのだが、刃物のような鋭い印象はない。逆に、柔らかい粘土のような感覚だ。

色は錆びている訳でもなく、アルミホイルのような光沢もなく、所謂「いぶし銀」的な色合いと風合い。

玉虫色? 光の当たり具合で何色とも取れぬ色に変化する。

それらが幾重にも幾層にも重なり合い、丁度、ミルフィーユのような体をなしている。

──そんなイメージが突然、脳裏に浮かんだのだ。


このイメージ自体に、それほどの重要性はない。その暗号めいた謎のオブジェクトの正体を突き止める必要性は何処にもないからだ。

思い出せないから悔しいと云った情緒的要素もなく、僕は全く違ったイメージを派生させたのだった。

「これって記憶そのものじゃね?」

──と。


 言葉は重ねれば重ねるほど
 体は重ねれば重ねるほど
 分かり合えなくなる。

こんなフレーズがチラつく。
そして、

 ただ、だからこそ重ねるのだ。

と続く。
そんな脳内連想ゲーム。


その脳内連想ゲームの具現物として──否、抽象の顕示化として脳内に浮かんだメタルミルフィーユが奇妙にシンクロしたのだ。

まさに、記憶そのものである、と。


 メタルミルフィーユ 記憶の抽象


ん、こんなタイトルで何か作ってみよう。
備忘録的な。。(´∀`*)


そんな感じで♪


【追記】 2011.06.05 22:35

金属片の正体判明↓

004255.jpg

釣り具の板おもり。
色目全然ちゃうやんなぁ(´∀`*)

や、古い10円玉宜しく、かなり使い込まれたものを使用したのだろう。
高々、理科の実験でまっさらなものを使うはずもあるまい。

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