ライア。
疑問が紐解けたよ。
こんなに簡単なことに躓いていたなんて…
君の言葉──君の存在自体…
──君の秘密が紐解けたよ。
ライア。
僕は宇宙の片隅にひっそりと浮かぶ地球と云う惑星に押し込められている。いつの間にか…
気付いたときには後の祭りさ。
どう仕様もない。
地球の外観は──
青くて、丸くて、優しいのだけど…
その実、内情は惨憺たるものさ。
形容し難いほど醜く歪んでいる。
歪んだ土壌に美しいものが育つはずないだろ?
でも、そんなことには誰も気付かないのさ。
例えば、気付いたとしても知らないフリ…
目先が丸ければお構いなしなのさ。
非道く歪んでるだろ?
でも、そんなことはどうでもいいのさ。
僕は僕だし、彼らも彼ら。
理解する必要なんて、何処にもないのさ。
そう。「お互い様」だからね。
そんな中で、僕は時折、空を眺める。
満天の星たちが輝く夜空をね──。
星たちを眺めていると自分と重なるのさ。
何故だかはよく分からないのだけれど…
彼らは果敢ない点滅をゆらゆらと続けている。今にも消え入りそうな。
それでも懸命に──。
そんなとき、
或る想いが一気に形を成したのさ。
本当に突然のことだね。
自分でも驚いているよ。
ライア。
君は存在していないんだ。
正確には今はもう存在していない。
僕は「残像」を見ていただけなんだよ。そうでなければ、あの「光」は説明が付かない。
眼も眩むばかりの目映い光──。
あの光が君が存在していない唯一の証なのさ。
ライア。
分かるかい? 僕の云っていることが。
まぁ、僕の声は届いていないと思うけれど…
君は眩い光の中に溶けたんじゃなくて…
そう勘違いしたのは僕だけど…
僕と出逢った頃には、
もう既に君は──
存在していなかったんだ。
星たちの輝きって云うのは、たった1秒間で地球を7回転半する最速の光ですら、何億万光年も掛けて地球に降り注ぐ。
そんな星たちの輝き──何億万光年前から届いた光だとしたら──?
果たして、今頃その星たちは存在しているだろうか? 否、きっと漆黒の宇宙の闇に呑まれて潰えている。
不思議だろ? 今は存在しないものを僕らは眺めているのさ。
君の纏っていた光もそれと同じなんだ──。
遥かなる時空を超えて、僕の眼に飛び込んで来ただけなのさ。
そう。出逢った頃には…
君はもう既に死に絶えていたのさ──。
ライア。
僕の説明で君の秘密が分かったかい?
当たらずとも遠からず?
やれやれ、何を云ってるのやら…
正解だよ。ド真ん中の大正解。
これ以上の答えは何処にもないよ。
方々探し廻った僕が云うんだ。間違いない。
他の答えがあるんだったら聞かせてくれよ。
僕は君の奏でる美しい旋律を聞きたいだけ。
ロマンティックなフレーズを
聞かせてくれよ。
深遠に広がる無限の沈黙──。
こう云う沈黙の美徳観は僕にも分かるよ。
それに、この手の類いの沈黙はひんやりと心地好い。凍えそうなくらいに寒いけどね…
痛さが滲みるのさ──
分かるだろ? 君なら。
ライア。
お陰ですっきりできたよ。ありがとう。どうにか答えに辿り着けたよ。知ってしまうと意外と簡単だったりするよね?
一陣の風と共になけなしの欠片が虚空に舞う。ふうわりと、優雅に──。
最後にひとつだけ──
これだけは云っておきたい。
光の女神に向かって小癪かも知れないけれど…
覚えていて欲しいんだ。
僕の答えは
「一千億万光年前の慟哭」
って云うのさ──。
届いた頃には僕はもう既に……
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