[エッセイ/随想]アイロニー考
(2009/06/14 23:19:18)


「強烈な二面性」とは、或る種の「#irony">アイロニー」である訳だが、全体を網羅、俯瞰する能力に欠けていると、そのまま額面通り被弾してしまう。

平たく「温室育ち」と言い換えれば良いのだろうか…

いずれにしても「受動型思考の典型」であると考えられる。

或いは、平たく「指示待ち人間」等々、自身で判断する、と云う最も原始的な部分ですら他に依存してしまう。

厄介なことに当人にその自覚がない。無意識でそれを行ってしまうのだから何とも咎めることも出来ず…

「氷山の一角」で全貌としてしまう早計さ。
それを「直感」だとして疑わない愚かさ。

しかも「受動的思考」であるにも関わらず、不都合な指示には従わない、と云う…

──僕は「濃度の違い」と云うことで括る。


他人の言動、その他諸々はその人の所有物であって、それに触れ、某かを感じたのならば、それは「自身の所有物の再確認」をしただけに過ぎない。

「有るものしか顕われない」とは、こう云うこと。

ないものには「反応」すら顕われないのだ。顕われようがない、自身に持ち得ていないのだから。

「読書」「読解」と云うことに刮目せよ。

他人が記した文章なりで某かの反応が顕れるのは、自身にもその要素が有ることを認めた証拠なのだ。

プラス要素であれ、マイナス要素であれ。
好都合であれ、不都合であれ──。

刹那で揺れ動く機微。

どちらの極に傾いでも、いずれにしても「自身の所有物」である。

──そこが「感受性の違い」だ。


何故、人は他人の著した物なりで感動するのか? できるのか?
それは自身でも気付かなかった「潜在能力」をくすぐられるからだ。

ポテンシャルの覚醒。

著した側は、明示的に、意識的に外界に放つ。──それが「能動的な表現」だ。
既知だからポイントを突けるのだ。

逆に、「不快感・嫌悪感」だけを外界に放つのは「受動的な表現」に過ぎない。

表層の、感情領域の話など、高が知れている。物事を「好き・嫌い」だけで判断することに慣れている証拠だ。論理的思考、建設的な会話はまず無理だろう。

建設的な会話の前に、建設予定地の整地がなされていない。不毛の荒野が広がるのみだ。


読書とは、他人の軌跡をなぞっているに過ぎない。「著者の既知のお裾分け」と捉えれば分かり易いだろう。

読解なり、語彙の解釈なりが稚拙なのは、他人の軌跡をぼんやりとなぞっているからだ。

他人の話を聴いているのか、いないのか、他人を見ているのか、いないのか、甚だ怪しいものだが、根底、どうでも宜しい。

自分の言葉──。

ここに、その人の半生なりが刻まれている。それらを拾い集めたのは、紛れもなく「自分自身」だからだ。
「審美眼」と云う杓子でもそれは測れる。

それが稚拙なのは…

ぶつかっていないからだ。
真剣味が足らないだけ。

そんな風に感じる。


柔らかい言葉、耳障りの良い言葉。
そればかりを追うことは僕にはできない。

でなければ、今の僕は今の僕たり得なかった。

「波瀾万丈」などと文字面で著せるほど簡単な要素ではない。

肉を斬らせ、骨を断ち──形容し難い、惨たらしい「負の要素」で満ち溢れている。

砂を噛み、はらわたが煮え繰り返るほどの苦渋・不都合を乗り越え──全身全霊を賭して突き進む。

──それが「魂に刻む」と云う作業だ。


僕は魂に刻み続ける。
生の潰える瞬間刹那まで──。


アイロニー 1 [irony]
[補足説明]イロニーとも
  1. 皮肉。あてこすり。また、皮肉を含んだ表現。風刺。
  2. 反語。
  3. 〔哲〕
    1. 知者を自認する相手を問いつめ、無知の自覚を促す、ソクラテス的問答法の一性格。
    2. 完全な意志疎通が必要でありながら不可能なところから生ずるロマン主義的イロニーをいう。
◆アクセント:アイロニー 1

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