[エッセイ/随想]青の本質
(2009/07/16 03:34:38)


静 - silent shout

以前、つらつらと綴ったもの。ここから派生して、再び脳内愉悦ランデヴーしてみた。

──「青の本質」である。


周知の通り、僕は漢字が好きだ。閑さえあれば、ピックアップした漢字の解体などを行い、独自解釈の世界観を拡げたりすることに余念がない。

僕が「漢字」をどう捉えているかと問われれば「優れたデザイン」と即答するだろう。

これは「漢字」だけに留まらず、僕は「文字」に対して「優秀なピクトグラム」として捉えている感が否めない。

これほど適宜・的確に意思を伝える表現手法が他にあるだろうか。

同言語圏内において、或る程度の教育を受けていれば、その文字を起こした発信者の意図なりは、かなり正確に伝えることができる。

それを「視覚的明示化」するために生まれたオブジェクトの集合体。「意思・思考」の断片を特定独自フォルムに落とし込んだもの。

「あ」と云う文字は「あ」と云う意味以外で捉えられることは、まず考えられない。誰もが「あ」と云う認識をする。

独立したビジュアル・インプレッション。確固たる先天的記号──それが「文字」だ。

文字には、象形文字、指事文字、会意文字、形声文字などの種類がある。
*その他に「転注文字」と「仮借文字」などもある。詳細については以下参照のこと。

http://ja.wikipedia.org/wiki/六書
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

それぞれの定義を簡易的に列挙しておく。


象形文字
「日・月」などのように、事物の形を描いて簡略化した絵文字。
指事文字
絵としては描きにくい一般的な事態などを抽象的な約束事や印で表した字。(形を持たない抽象的な様子・動作・状態などを象徴的に表そうとした字)「一・二・三」などの数字や、平面上に├印をつけた「上」や、平面の下を├印で示した「下」なども指事文字。
会意文字
象形文字や指事文字(文)を組み合わせて、更に複雑な意味を表そうとしたもの。武(戈+止)や、信(人+言)などの文字。
形声文字
「シ(さんずい)+音符:エ」→「江」や、「シ(さんずい)+音符:可」→「河」のように、片側に発音を表す音符(つまり意味を表す言葉)を含み、他方にそれが何の事態に関係するかを示す(へん)を添えたもの。漢字全体の七〜八割はこれに属している。

象形文字と指事文字の二種がすべての漢字の基本となり、これを「(もん)」と呼ぶ。
(もん)は「(もん)」の原字で絵模様のこと。

会意文字と形声文字の二種は「文」から派生し増えたので「字」という。「字」は「孳」・「滋」(ふえる)と同じような意味だ。


僕がよく行っている「漢字解体」とは、平たく「会意文字的検証」と呼べそうだ。

冒頭に挙げたスペルでは「静」の部首「青」について着目していることが窺える。

http://ja.wikipedia.org/wiki/部首
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


些か前置きが長くなったが…

先に挙げた「静」について「青」の解釈が微妙に異なっていることに気付かされただけなのだ。

http://ja.wiktionary.org/wiki/静
出典:フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』

こちらにその解答なりを発見した。


「青」には「澄み切った。穢れのない」と云う意味が込められている。他に「井」「晶」なども同じ意味だ。

「青」だけに注目すれば、「清・精・請・静・情」──これらは元を正せば、すべて同じ意味だ。

「清」→「シ(さんずい)+青」
 意味:澄み切った綺麗な水。

「精」→「米(こめへん)+青」
 意味:汚れなく精白した米。

「請」→「言(ごんべん)+青」
 意味:澄んだ目で相手を見つめ、穢れない言葉で頼むこと。

「静」→「爭(とりあい)+青」
 意味:とりあいをやめて、しんと澄み渡った雑音のない状態になること。

「情」→「心(りっしんべん)+青」
 意味:心の動きをもたらすエキスのこと。本当の気持ち。本心。


これらを踏まえると、「清水」「精米」とは同じ意味を被せているだけなのだ。本来、1文字で十分に意味は伝わる。

(セイ)と云う文字も、これらと同系統だったりする。そこで不意に「靖国神社」と云う言葉が浮かんだ。

成る程。様々な言い分はあろうが「靖国」とは護国の英霊たちに相応しい良い名前だ。


「静」の旧字体は「靜」だ。

「青」の部分に着目すると「画竜点睛」の「睛」の文字が浮かぶ。「青」の下部が「月」と「円」で微妙に異なる。

画竜点睛の故事成語の意味は云わずもがな「最後の大事な仕上げ」のことだ。竜の画を描くとき、その瞳を描くのを最後の仕上げとしたことから由来する。

「睛」──訓読みは「ひとみ」だ。


そんなことを踏まえると「青の本質」とは、澄み切った穢れのない瞳だけに顕われるのかも知れない。

流れから「青の時代」──。
そんな言葉も思い浮かぶ。

そして、ピカソや三島由紀夫が想起される。彼らがこぞって「青」へと傾倒した流れに頷けるような気がする。


ただ、やはり僕は──、

 silent shout

 或いは、

 silent loudness

──そう在りたい。


静寂の爆音を音声なき咆哮に認む──。

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