[会話/戯曲]SWEET TRAP
(2008/07/17 12:57:39)


「罠を仕掛けたね?」
「え?」

夕食を終えた彼が箸を置きながら訊いた。彼女は穴の開いたような顔で彼を見つめる。


「罠?」
「ああ。まんまと嵌ってしまったよ」
「えっと、よく分からないのだけれど…」
「とぼけるのもうまい」

彼が微笑んだ。

「こんなご馳走は罠に違いない」
「何故?」
「また食べたくなる」
「ふふ。気に入ってもらえて嬉しいわ」
「実に巧妙だ」
「そうかしら」

彼が彼女を見つめた。

「僕以外には使用禁止だな」
「どうして?」
「危険だから」
「もし破ったら?」
「僕が哀しむ」
「まぁ」
「また作りに来てくれるかい?」
「いいわよ。次は何が食べたいの?」
「君かな?」
「あら。ストレートね」
「や、ほんのジャブさ」
「口の減らない人」
「口はひとつさ」

彼が愉快そうに笑う。

「次っていつの話かしら?」

彼はテーブルの上に合鍵を置いた。

「君が決めてくれよ」
「罠?」
「ああ。仕掛けられたら仕掛け返す」
「律儀なのね」
「や、我慢が足らないだけさ」
「うふふ。面白い人」

彼女は微笑むと、合鍵を手に取った。

「で、次はいつかな?」
「教えたらサプライズにならないわ」
「ふふ。君のほうが一枚上手か」

彼女が悪戯っぽく微笑み掛けた。

「嵌ってくれるの?」

彼が照れ笑いを浮かべる。

「嵌らなければ罠じゃない」

ふたりだけの空間に甘い香りが立ち込めた。

*2008/06/29-07/01 臨海隔離施設にて

Keywords: SWEET TRAP 罠 合鍵 サプライズ

Tags: 危険, 我慢, 臨海隔離施設, 面白い


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