私の存在はない。
私の存在は輪郭を持たない。
私の存在は私ひとりでは成し得ない。
私の存在は他者という観察者によって初めて認識される。
他者の存在もまたない。
他者の存在もまた輪郭を持たない。
他者の存在もまた他者ひとりでは成し得ない。
他者の存在もまた私という観察者によって初めて認識される。
私はひとりではない。
私という私の主観は私がそう思い込んでいるだけであって、他者にとっては客観そのものだからである。
他者もまたひとりではない。
他者という私の客観は私がそう思い込んでいるだけであって、他者にとっては主観そのものだからである。
私は他者を必要としない。
他者も私を必要としない。
私と他者の関係とは、私は私、他者は他者、と相互に認識し得るだけで事足り、改めて要・不要の選別によって切り裂かれるものではないからだ。
私という一人称は他者という三人称から昇格した二人称によって初めて形成し得る。
他者から「あなた」という二人称に昇格した者──それが、私が私自身を私自身だと決定付け得る唯一の根拠なのだ。
二人称に恵まれない者よ。
刮目し渇望せよ。
視覚で認識できるものはそれ以上でもそれ以下でもないが、眼を見開かなければ見えないものがあることも否めない。
二人称を識別できない者よ。
瞑目し絶望せよ。
理で知り得ることは高がそれまで。理を越えることはない。眼を瞑っていても見えるものがあることを知り至るまで。
五感を度外視してでも自身に迫り来るもの。それは絶望している者にのみ降り注がれる。
刮目と瞑目を繰り返すと、ちょうど、瞬きをしているように見える。
或いは、渇望と絶望もまた一喜一憂の美学である。
希望とは己の望み──己望なのだ。
さぁ、夢見て眠れ。
眠りに落ちる微睡みの、
意識がジリジリ削れる中で──
私の存在はない。
私の存在は輪郭を持たない。
私の存在は私ひとりでは成し得ない。
私の存在は他者という──。
*2018.05.09・草稿
Tags: 不要, 他者, 存在, 必要, 意識, 私, 草稿, 輪郭
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