どういう経緯でこうなったかのかは定かではないが、ひとりの男が複数の男たちに囲まれていた。見るからに屈強そうな体格の良い男たちがジリジリと間合いを詰めてくる。まさに一触即発の危険なムード。そんな渦中にありながら、囲まれた男は億劫そうな表情を浮かべるだけで、少しも動じている様子はなかった。
「お前らまとめて相手するほど、お人好しのつもりはねえんだがなぁ…」
「うるせえっ! 手前の御託は聞きたくねえっ!!」
「まぁま、血相変えちゃって… カルシウム不足なんかねぇ?」
「手前! おちょくってんのかっ!?」
「おちょくってるのはどっちなんだよ。そんな大勢で寄ってたかって…」
「手前だけは勘弁ならねえんだよっ!」
「わーった、わーったよ… ったく、めんどくせえなぁ…」
「この野郎! いい加減に…」
男のうちのひとりが拳を振り上げて飛び掛かろうとしたとき、億劫男が手を上げて制した。途端、勢いが止まる。
「まぁ、待て。俺の話もちったあ聴けよ」
「ああん!? 何だっつーんだよ!?」
「面倒だがお前ら全員相手してやるよ」
「おおう! やってやらあっ!」
「できるだけ小出しで順番に掛かって来いや」
「あ? 何だと…!?」
「何だ? もっぺん復唱するか?」
「や、そんなことはどうでもいい…」
「相手の都合も考えて掛かって来いよ… ホレ。もういいぜ」
億劫男がブルース・リー宜しく手招きしている。取り囲んだ男たちは顔を見合わせ、呆気に取られていた。億劫男が怪訝そうに首を傾げる。
「ん? さっきまでの勢いはどうしたんだ?」
「や、その… なんだ…」
「何だよ、云いたいことがあるなら云ってみろよ」
リーダー格と思しき男が少し紅潮した頬で呟いた。
「お前、案外、オモロイ奴なんだな…」
「あ? そんなこと今頃気付いたのかよ。俺は果てしなくオモロイ男だぜ。折り紙付きのお墨付きさ」
「やぁ、今のひと言で何だか全然、怒り収まっちまったよ…」
「そうか。それは俺にも都合がいい」
取り囲んだ男たちの口許にも笑みがこぼれていた。
「あの… お友達になっていただけますか?」
リーダーがそう申し込むと億劫男が破顔した。
「お友達以上にはなってあげないんだからねっっ!」
ツンデレか…w
そんな感じで♪
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