「覚えてる?」
「何を?」
「ああ、忘れちゃったのね…」
「何のことだ?」
「あなたは自分のことしか興味ないんだわ…」
「興味?」
「ええ、自分さえ良ければ他人はどうでもいいのよ…」
「ああ、誤解を与え兼ねないが大枠はそうだと思う」
「はぁ…」
「──」
「何故、人は忘れてしまうか知ってるか?」
「──?」
「興味がないとかは関係ないんだ」
「──」
「骨身に滲みてないからさ」
「──」
「丹念に何度でも塗り重ねろ」
「──」
「そうすればやがて浸透する」
女は背を向けた。
「おい。俺の話…」
「忘れたわ──」
凍てつく空気が瞬時に浸透した。
Tags: 他人, 忘却, 自分, 誤解
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