狼は群れを成して生活している。その習性からすると「一匹狼」という概念は本来、成り立ちにくい。狼は一匹では生きてゆけないのだ。
では、何故、群れを抜けるのだろうか? 或いは、抜けたがるのだろうか?
群れの構成員である一匹の狼。彼は群れの中で生きることに某かの違和感を覚える。
一匹では生きてゆけないことを何処かで知りつつも、その群れから離叛し、孤独を選択するのだ。
孤立無援。孤軍奮闘。
そんな四字熟語が浮かぶ。面白いことに、正と負の要素で対を成している。
何に違和感を覚えるのだろうか?
それは「群れの秩序」に隠されている。平たく「ルール」である。そのルールはその群れの独自性が高いことが多い。
そのルール制定に至っては、その群れの長の独断と偏見に依るものが多く、近視眼的で汎用性に欠けるものなどが雑多に混在している。
言い換えると、
その「群れの中でしか通用しない正義」という尤もらしい「基準」に埋め尽くされ、「暗黙知」という蜃気楼のような概念に支配される、
ということだ。
例えば、一旦、その長との折り合いが付かず、反目にでもなってしまったら、その群れの中では浮き上がり、必然的に過ごしづらくなる。
或いは、長以外の者との折り合いも付けづらく、長と直接対決せずとも、体力差なども加わり、戦意喪失してしまう場合もあるだろう。
こうして、狼は憤懣やる方なく群れから離れてゆく訳だが、この概念を人間に当て嵌めてみると──?
と、ここでキータイプが止まる。別段、後ろ暗さからではない。
そもそも「人間」という社会的動物は社会に参加している時点で「一匹」ではないのだ。
性格的に歪んでいて、親しい友人などがいなくとも、食物連鎖から外れた領域でのうのうと生を貪る人間が潔く生を全うする他の野生動物との比較の壇上に登る由がないのだ。
原生的動物として見れば、圧倒的に人間のほうが格下であり、余剰の余剰の上に成り立った最も迷惑で卑しい存在なのだ。
何より、僕が云いたいことは、
一匹狼など何処にもいない、
ということだ。
自然界に棲む狼ですら群れを成している。我々と同様に徒党を組んで生きているのだ。
一匹狼という概念は、気付かぬうちに得体の知れない何かに支配されていることを憂う、我々人間が作り出した幻想のひとつだ。
見えない鎖で雁字搦めに拘束されていることを百も承知で、自由とカタルシスを渇望する、哀れな道化のなけなしのレジスタンスなのだ。
狼──。
けものへんに「良い」と書いて「狼」
狼が地球上で最も気高く最も善良な獣なのかも知れない。
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