「アニキは男にゃキビシイのになんで女にゃ甘い訳?」
見舞い以来しばらくだった弟分が出し抜けに訊いてきた。鼻の頭を掻きながら苦笑した。
「だって可笑しいじゃんよぉ。そりゃ女ァ付け上がるって…」
病み上がりだというのに手厳しい…
煙草の灰を灰皿に落としてから一服。
「や。女の子のわがままなんてカワイイもんだって。目くじら立てることじゃねえよ」
「ま。分かるけどさぁ…」
「俺は男の前でのほうがカッコつけてる思うで、実際」
「それも分かるような気がする」
「上下関係だとかウザイもんがあったりするやろ? もーそれだけでフラットじゃいらんなくなる。その点、女の子といるときは気楽でいいよ」
「…」
「俺は大概何でも許しちゃう。浮気だの何だの… 普通の奴だったら怒り狂うようなことでも全然平気だな」
弟分は黙って頷いていた。
「でも、これって『俺のことも全部許せよ』ってゆープレッシャーでもあるんだろうな」
短くなった煙草を灰皿でもみ消しながら「口に出さないから尚タチ悪い」と。弟分も苦笑を浮かべた。
本気になるのが恐いのだと思う。
幾度となく本気になった者が目の前から離れて行った、手からすり抜けてゆくように。
掴みかけたものを失うことが恐いのだ。
あるいは、掴んだと錯覚してしまうことがおこがましいとすら感じてしまう。
本気になればなるほど空回りしているようで自分自身が腹立たしい。だから、適当に。
上辺だけで付き合ってあしらっている訳ではない。自分が傷つく以前に相手のことを考えてしまうのだ。『こんな俺と関わって悩む必要はないよ』と。
「それに相手にする子が若いって。若い子がいいの?」
なおも詰め寄る弟分。
「アニキの考えは若い子にゃ伝わらんって」
「や。相手にしてるつもりはねえよ。向こうが勝手に来るんだからしょーがねえじゃねえかよ…」
「よく言うよ! 絶対アニキのほうから行ってるよ!」
「そー見える?」
「ああ! そーゆー風にしか見えない!」
何だかすごい剣幕に圧倒されそうだ。
「考え過ぎだって、それは。それにトシなんて関係ねえだろ。トシ相応以上にツライ経験だってしてたりするよ、彼女らも。俺はそれが分からない訳じゃないって思いたいんだろうな」
「ふ〜ん…」
「ま、優しさを履き違えてるトコあんのも否めねえけどな」
『雨降って地固まる』のことわざの真偽のほどは定かではない。
ただ、ひとつの障害を乗り越えられないのであればそれまでだ。先はない、と。そんな風に考える。
トライアル版よろしくお試し期間ゆーのってないのかしら?(笑)
結局、深みに嵌まって痛い思いするの自分なんですけど…
ま。相手がハッピーなら問題ナッシング♪
「経験は財産」。
何かに活かされれば、それで構わないね。
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