[寓話/お伽噺]近衛連隊長の責務
(2005/06/16 00:02:00)


6月16日 曇天・雨天

16:30
姫君は、祖国一時帰国のための乗車券を警護させている皇帝閣下が建造されたトラベルツアー宮殿まで御自ら向かわれた。


場所は皇帝閣下が統治されている歓楽領・新宿である。皇帝閣下が統治されているとは云え、与り知らぬ領域で魑魅魍魎の類いが生息しているやも知れぬ。

私は近衛連隊長として、護衛することを強く懇願したが「生憎の空模様でもあるし」と云う事由より、城内警護を申し遣わされたのだった。

城をお出になる前に踵を返しながら手を振られた姫君の口元には、麗しくも儚げな微笑が湛えられていた。

一介の近衛連隊長ごときに対して、大海原のように広大な姫君のお心遣いを噛み締めつつ──しかし、近衛連隊長の責務とは?

胸が張り裂けんばかりに切ない──。


姫君を見送る皇帝閣下の慈愛に満ちた眼差しを背に、脳裏を掠める悪しき危惧を無理に振り払いながら、城内警護に生命を賭すだけであった。


あぁ、姫君。どうかご無事を──ご無事をお祈り申し上げまする──。

Keywords: 近衛連隊長 責務

Tags: 慈愛, 領域, 魑魅魍魎


TOPへ戻る

(C) Art Studio Vincent. All Rights Reserved.
Powered by MT4i 3.1