[エッセイ/随想]大事な場所
(2005/08/01 06:09:00)


コンビニの帰り。

いつもの坂道を登り切ると、いつもの場所にいつもの仔猫がちょこんと坐っていた。


何かを待ち焦がれているような表情。

近寄ってしゃがみ込むと、怯えるような視線を投げてくる。ごめんね、 と心の中で呟き、離れようと腰を上げ掛けたら、ゆっくりと歩み寄ってきた。

そっと手を伸ばすと、ぺろっと舐めてきた。口許を緩め、しばらくしてからゆっくり立ち上がった。

下から覗き込むような視線を尻目に、竹林を横目に大事な場所に戻ってきた。


ただいま、と心の中で呟くと、おかえり、と云う声が聞こえたような気がした。


ソファに腰掛け、モニタに向かう。


目の前には火の点いた煙草からゆらゆらと煙が立ち上り、使い切ったテレフォンカードが1枚──。


右側には帽子を被ってリュックを背負った男の子。左側には踵を上げた女の子。

女の子の左手には花が握られている。右手は男の子の左手にしっかりと繋がれている。

互いに寄り添い、互いに鼻を擦り合わせている。

そして、互いの口許には微笑が──。


セピアトーンの何故か懐かしい写真。


カードの右下に「初恋物語」と書いてある。


コメント

2005年08月01日06:11 vincent.

「いつものコーヒー」をひとくち含んだ。
モニタを眺めながら、煙草に火を点けた。

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Tags: コンビニ, 声, 恋, 煙草, 花


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