大振りのオールド・ファッションド・グラスの中で溶けた氷に揺蕩うバーボン・ロック。
それを片手に僕は喩え話をする。
このグラスの中に「生と死」があるんだ。
イメージできるかい?
アルコールと溶けた氷とが揺らめいている。
互いに「いい関係」だ。
例えば、アルコールが「生」だとすると、氷は「死」だ。
関係が逆でもそれは同じこと。
それらが絶妙に絡み合って「バーボン・ロック」──どちらも切り離すことはできない。
「生きたい」と望む心と「死にたい」と望む心とが絶妙に絡み合っている。
イメージできるかい?
幸せ絶頂のとき、「あぁ、今死んでも悔いは無い…」とか感じたりしないかい?
逆に、最悪に落ち込んでいるとき、「あぁ、生きていても仕方ない… 死にたい…」とか…
ベクトルは両方とも「死」に向かっている。
意味合いは違うかも知れないが、両方共「死にたい」だ。そうだろ?
それでも瞬間消えてなくなる訳には行かないから、おめおめと生き恥を晒す。
とどのつまり、それが「生きたい」だ。
な?
このグラスの中に「生と死」があるだろ?
いい感じで織り混ざってる。ふふ
口当たりはきつくても、
うまくて当然さ──。
…てな話をしながら杯を重ねる。
こう云うのを「酒呑みの能書き」と云う。
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