[会話/戯曲]愛をください
(2007/08/29 13:01:41)


「あなたが欲しいものって何?」
「ん? 僕の欲しいもの?」
「ええ。なぁに?」
「返答に困る質問だな…」
「簡単よ。わたしからプレゼントされて嬉しいものよ」
「君から? はて…」


「んもぅ、じれったいわねぇ。分かってるクセに…」
「や、知らないことのほうが多い」
「タイトルにもあるでしょ?」
「ふふ。それを云えばいいのかい?」
「そうよ。意地っ張り」
「意地なんか張っちゃいないさ」
「じゃ、どうして?」

「風が吹けば飛んでゆく」
「──」

「君は僕の大事な人──君からそんな軽いものを貰う訳にはいかない」
「──」

「哀しくなるだけだ」
「…あなたは今まで何を見てきたの?」

「何も見ていない」
「え……?」

「透明な風が吹いていたよ」
「──」

「心地好い欠片が舞っていた」
「心地好い欠片?」

「ああ。身震いするような」
「そう…」

「君にそんな安っぽい欠片を吐かせたくないだけなんだ」
「あなたって…」

「なんて馬鹿な人、かい?」
「や、そうじゃなくて…」
「?」
「綺麗な人」
「お世辞はよせよ。綺麗な人が聞いたら怒り出す」

「いえ、お世辞なんかじゃないわ」
「そう? ありがとう。嘘でも嬉しいよ」
「嘘でもない。本当にそう思うわ」
「思うのは自由さ」


「あなたに欲しいものを訊いておいてアレだけど…」
「うん。どうした?」
「わたしの欲しいものを聴いて欲しいの」
「ああ。いいよ。何だい?」


「あなたの愛をください」


彼は口許に僅かな微笑を浮かべた。

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Tags: 嘘, 心地好い欠片, 愛, 涙, 知らないことのほうが多い, 透明な風, 風, 馬鹿


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