「謝」と云う文字の解体を行う。
まず、篇とつくりを分離。
「言」と「射」に分かれる。
ごんべんの「言」は云わずもがな「射」のほうは「射抜く」など「某かを撃ち抜く」と云う意味が込められている。
これらをまとめると、「謝」と云う文字が持つ意義が垣間見える。
言を射る。
より理解を深めるために装飾すれば、
言霊を発射する。
と云うことだ。
「感謝」と云う言葉がある。
上述に準えれば、
感じた言霊を発射する。
と云うことだ。
「感謝」の持つ意義根底が自分が知っていることよりも、よりディープなものであることが窺える。
「感じた」のは「こちら」だ。故に、「感じた言霊」と云うのは「こちら」が抱いた「一方的な想い」である、と云える。
その「一方的」な想いなりを他方に向かって「発射する」のだ。
──ともすれば「自分本位な砲撃」である。
前節は「感謝」を「能動的」に捉えた場合の解釈だ。これを「受動的」に捉えると、どうなるか?
感じる言霊に射抜かれた。
──何故か、ときめくのは気の所為か。
「謝」の前置きとして置かれた「感」の語尾が多少変化するのは「思考回路の手続き」に依るものだと云えよう。
平たく、時制の違い。「感じた」と云う「過去形」と「感じる」と云う「現在形」の違い。
咀嚼のために「感謝発生」のフローを辿ってみる。
まず、前節の「能動的感謝」から、
こんなフロー。
次に、次節の「受動的感謝」。
お分かり頂けるだろうか? タイムラグなしでダイレクトに「感じる」のだ。「反射神経」のプロセスにも似通っているかも知れない。
そして、悩ましいことに「自」の抱いた「感謝の欲求」は「満たされない」のだ。
「自」の抱いた「言霊」なりは「自」の内面で旋回し「封殺」される──「射抜かれた」のだから当然と云えば当然である。
要は「うぅ…やられたぁ…」と云うことだ。
ここで「ありがとう」の意味に少し変化を感じる。
否、それは変化ではなく、そもそも内包されていたものに改めて「気付いた」と云うことだろう。
要は「覚醒」──である。ポテンシャルの覚醒。
ありがとう=有難う
有難う→有り難い→有ることが困難である=有り得ない
有り得ない──。
「自」が抱いた「感」は「有り得ない」──。
要は「無いもの」である、と。
では、この内面を旋回するものは何なのだ? と。想いが形を成さず、やきもき…もやもや… 煙が立ち込める。
色即是空 空即是色
「そもそも何もない」と云うこのマントラが、まことしやかにその信憑性を高める瞬間でもある。
そして、同時に心地好い悶絶──でもある。
「受動的感謝」に覚醒すると、自身の抱いた「感謝の気持ち」と云うものが、一体、どう云ったものであるのか、と…
適宜な回答を導き出せないが故に、
更にディープに深まる──。
「感謝」の「言霊」は重い。圧倒的重量級。ヘヴィウェイトだ。
それを「他」に向けて「発射する」とき、両「感謝」発生のプロセス──「能動的感謝」と「受動的感謝」を考慮し、内包すると、自が放つ言霊は心地好く他に滲み渡る──。
故に「ありがとう」と云いたい。
「受動的感謝」でありつつも溶け入って、せせらぎのように相手の内面宇宙に滲み渡ることを願って──。
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