[エッセイ/随想]Shy or Alone?
(2007/10/18 06:37:02)


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あなたは恥ずかしがり屋さんですか?
それとも寂しがり屋さんですか?

10月16日、夕刻。
都営三田線電車内での1コマ。

車輌の一番隅にあるシルバーシート。四人掛けの対面タイプ。地下鉄では割と珍しいタイプだろう。僕は密かに「旅行モード」などと呼んでいる。

隣りの車輌に背を向けた側は窓付き。対する対面には窓はない。

3席空席だったのだが、気になったので立っていた。窓なし通路側にご老人が坐っていたからだ。

僕から見ると、丁度、背中を向けた格好だ。グレーのフェルト・ハットが似合っていた。

冒頭の疑問に、ふと思考を巡らせる。


四人掛けの座席と云うことは定員四名まで着席できる。

最初のひとり目はどの座席に坐るのか自由に選択できる。すべて空席なのだ。当然の選択権である。

その選択肢によって無意識に働くその人の「心理」が朧げながら読み取れる。

彼は窓側を選ばず、窓のないほうを選択した。地下鉄だから、車窓の外から中を覗き見られる、と云うことはないだろうが、それでも尚かつ外界とシャットアウト。

しかも、隣りの車輌に背を向けたほうを選択しなかった、と云うことは、同じ車輌の人々にも背を向けている状態である。或る意味、外界とのシャットアウトは念入りに行われている。

何故、彼が窓側を選択しなかったのか、と云う疑問を少し掘り下げると、「窓際」と云う響きの持つマイナス要素が彼をそうさせたのかも知れない、と云うことも浮上する。

ただ、それは些か深読みの領域だろう。兎に角、彼は窓側を選択しなかった。

ここで、ひとつ目の心理、「恥ずかしがり屋さん」が浮上する。「照れ屋さん」かも知れない。

すると、必然、彼は通路側を選択することとなる。

最初のひとり目が通路側に坐ると云うことは、後から来た者が自分の着席意向を最初のひとり目に、「ちょっといいですか」と告げることとなる。

例えば、脚を組んでいようとなかろうと…要は、通路が広かろうと狭かろうと、一瞬でも他人の眼の前を通過するのだ。ひと言掛けるのが礼儀だろう。

外界とシャットアウトはしているが、他人から声を掛けられることは閉ざしていない。

彼の状態を端的に示せば、こう云うことになるだろう。彼は自由な選択肢の中で、この座席を選択したのだ。


冒頭に浮かんだ僕の疑問は瞬間的に浮かんだものであり、日常と云う空虚な幻想にどっぷり埋没していない者ならば、常日頃から、日常茶飯事、無意識配下で、同等の思考プロセスが繰り広げられているだろう。

常々、綴っていることのひとつに「能動的たれ」と云う主旨が多く見られる。

我が魂の命ずるままに──。

これなどは「能動」の頂点であろう。

だが、人間と云うのは不思議なもので、自らの選択、決定によって、すべてを判断している訳ではない。

「何となく」

こんな曖昧な決定権が最後の砦だったりするのだ。固い言い回しに言い換えれば、顕在意識下での決定ではなく、潜在意識下での決定が「結果」として露見する、と云うことだ。

人は生まれた時点で「受動的」と括った根幹でもある。生まれながらにして「M」である、と。


シルバーシートの存在意義は何となく理解しているつもりだ。僕は、特段、敬老の念はない。何年生きていようがアホな奴はアホ。

僕は、単純、ひねくれているし、同時に、儒教思想のぬるさに辟易としていたりするくらいだ。

年長者を敬う、と云う思想は儒教概念のひとつだ。要は、年寄りをやたらめったら尊敬しなさい、と。

僕が呆れる様子が伝わるだろうか。僕が「尊敬」と云う言葉を使いたがらない原因のひとつでもある。「言葉の意味が軽い」のだ。

そんなに「尊敬」「尊敬」をワゴンセールするなら、チェキラッチョ宜しく「リスペクト」くらいの軽さで丁度良い。そんな風に感じている。

元に戻して…

冒頭の疑問符。

あなたは恥ずかしがり屋さんですか?
それとも寂しがり屋さんですか?

彼はどちらを営んでいる経営者なのだろうか。いずれも僕も営んでいるので、先輩としての意見を、是非、拝聴したいものだ。

その論旨・根幹に素晴らしいものを感じれば、僕は「尊敬の念」を抱くだろう。

僕は驚くほど単純明快な人間だ。自分自身で自分の身の程は知っているつもりだ。

大概、何でも簡単に受け入れる。否定的なスタンスは殆どない。
──これは大概の概念に当て嵌まる。

 人見知りで社交的。
 人懐っこくて閉鎖的。

それ以外にも幾多の「矛盾」を同居させているだけだ。

なので、彼の答えを訊きたいのだが、躊躇の念が支配する。そして、同時に「そこまで…」と云う諦観の念に駆られる。

ま。他人なんぞどうでも良いしな?(´∀`*)


そうして、暫く眺めていたのだ。
僕は閑さえあれば、脳内プレーヤをフル回転させている。
壊れ易いのは必然かも知れない…苦笑

そんなこんなで、暫く固唾を呑んで見守って(?)いたのだが、果たして、ふたり目がシーンに登場した。

軽く注目。ふたり目も年配の男性であった。
はてさて、どんなシーンが紡がれるのか…

……。

ひとり目の老人の脚にぶつかったにも関わらず、後から来た年配者はアクションなし。ぶつけられた当人もノーリアクション。

……。


何、不感症…?(´・ω・`)


ヒジョーーーーーにつまらん…
え? なんなん、何もなし?
へぇ〜あっそぉ…

僕のひとり脳内劇場はこうして幕を閉じるのである。


奇しくも、巣鴨駅で共演者たちも降りた。
彼らの背中が寂しげに見えたのは、多分、気の所為だろう。

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