遠隔から射る言霊に愉悦を覚える。
目標物は定まっているのに足許覚束無く、
ゆらゆらと迷走しているかのようにも映る。
虚空に浮かぶ、透明な輪郭を撫沿る。
眼の前には姿を現わしていない、
あなたのシルエット──。
あなたを決定付ける形容が、
徐々にフェイドインしてくる。
仄かに笑みを称えた唇が眩しい。
柔らかな髪の毛が風の中で舞う。
そして──、
その瞳には、僕しか映し出されていない。
より輝きが増しているから不思議だ。
逢えない時間が、ゆっくりと息苦しく過ぎてゆく。心地好い、恍惚の拷問──。
焦がれる時の刻みが愛おしいから、
僕は、また、立ち止まってしまうんだ。
それはテンプレートのない魔法陣で召還され、
いずれ封印されてしまうかのように──。
分かっているのに立ち止まってしまうんだ。
僕の願いは、たったひとつ、
もう想い出の人にはなりたくない。
ただ、それだけなんだよ。
Keywords: テンプレート 魔法陣
Tags: 愉悦, 愛, 言霊, 輪郭, 風
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