良い子でいることに飽くと欺きたがる。
自己欺瞞としての欺きではなく、良い子の側面を他人に晒さず、自身の中で封印するのだ、かっちりと施錠して──。
それを悪徳と知りつつも欺くのだ。
悪徳の隠蔽──。
「臑に疵を持つ」とは、こう云うこと。
臑に疵持つ者同志は「秘密」を共有する。
「良心の呵責」を封印する「背徳感」と云う秘密を。
倫理的、道義的、社会通念を越えた、嗜虐的で、排他的で、倒錯した世界観──。
故に、ゾクゾクする。
いずれかが寝返れば、その秘密は暴露する。知らない者が居ない秘密など秘密とは呼ばないからだ。
お互いに牽制しているうちは秘密は保持される。その強固な城壁は誰にも崩されたりしない。
守秘義務契約などを結ばずとも「疑惑」と云う秤なしでも成立する。二者間のみで共有する──とても「甘美」なものだからだ。
酔い痴れているうちは侭なるのだが、一旦、亀裂が生じると、疑惑以上の疑惑に呑み込まれ、遂に城は崩壊する。
鉄壁の城壁が土砂を塗り固めただけのものだ、と云うことを思い知る瞬間、砂上の楼閣を実感する。
脆く儚い「幻想」と云う名の城壁──。
本来、大事なものは何ひとつ預けられない。
臑に疵持つ者同志の共通項。
──それは「欺騙」。
九罪(9種類の倫理上の罪)のうちのひとつ。
ただ、他人は欺けても、自身は欺けない。
自己欺瞞と云う嘘をついたとしても…
やはり、苦しむのは自分自身だけなのだ。
臑に疵を持つことがどう云うことか。
良く吟味し、熟考し給え。
だが、思考に規制は敷かれない。
自由に羽ばたき給え──。
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